ホテル業界のキホン

ザ・ホテルの仕事

ホテルマンといっても、その仕事内容は部署によってそれぞれだ。まずはホテルの中にどんな仕事があって、それらがどう関係しているのかを知ろう。

総支配人

ホテルの総指揮官。一般には「GM」(General Manager)と呼ばれる。ホテルの運営に関する責任と権限を持つ事業執行責任者。経営理念や哲学を組織に深く浸透させ、目指すべきゴールを提示するのが仕事。複合型サービス産業とも言えるホテルでは、数十種の職業が混在するため、そのすべてを統制するリーダーの能力がネックとなる。利益・顧客満足・従業員満足の3つを高めていく力が求められる。

副総支配人

英語ではResident Manager(RM)。組織の2番手として総支配人を補佐する。総支配人が不在の場合は、その代行としても活躍。高い目標を掲げる総支配人と、現場で売り上げを管理する各部門長の間に立ち、調整役として冷静な状況判断が求められる。

フロントクラーク

主に宿泊ゲストのチェックイン、チェックアウト業務を担当。客室稼動率が低い日などは、チェックイン時に「プラス●万円で、広いお部屋にアップグレードできますよ」といったアップセリングも。精算・両替・貴重品の預かりといった責任ある仕事も多く任されている。また、宿泊予約やコンシェルジュが業務を終了した夜間は、その代行も行なう。「何かあればまずフロントへ」と考えるゲストも多く、最も問い合わせの多い部署だろう。

ベルボーイ・ベルガール

宿泊ゲストの荷物をお持ちして、客室までご案内をする。朝刊を客室に届けたり、ゲストの荷物を一時的に預かることもベルの仕事。ホテルの中を縦横無尽に歩き回ることができる仕事でもあり、他部署との関わりも大きい。ちなみに、館内のゲストを呼び出すとき、ベルが「ページボード」と呼ばれる案内板に名前を書いて歩き回るのだが、そのボードにゲストの注意を引くための鈴が付いているため、こう呼ばれるようになった。

ドア

ホテルの玄関で、車で来館したゲストのドアを開け、安全かつスムーズに館内へとご案内する。大きな宴会場を持つホテルのドアマンは、「黒塗り」と呼ばれる高級車や、ハイヤー、タクシーなど、一時に数百台の車を扱うことも。中には、リピーターゲストの名前とセットで、そのゲストの車種と車番を1000台分以上暗記しているドアマンもいる。ゲストと接する時間は短いが、ホテルで一番最初にゲストを迎えるという重要な仕事。

コンシェルジュ

フランス語で「門番」という意味を持つコンシェルジュは、ホテルの何でも屋。お客さまのリクエストには「NO」と言わずに答えるのがモットー。スポーツの観戦チケットから新幹線の乗車券や航空券の手配、館内外にあるレストランの予約、観光案内、ビジネスサポートなど、その仕事は多岐に渡る。情報通でなければ務まらない仕事。「レ・クレドール」という世界的なコンシェルジュ会員組織があり、横のつながりがとても強い。語学力必須。

オペレーター

外線・内線に関わらず、ひっきりなしに鳴り続ける電話に対応する“声のサービス”。「レストランの予約をお願いしたい」「宿泊客に電話をつないでほしい」「迷子になってしまったのだけど、どうやってホテルまで行けばいい?」など、その質問内容は幅広い。必要があれば関係部署に取り次ぐが、出来るだけその場で即答できるように日頃から勉強を重ねている。電話から聞こえる音や声だけで、相手の状況と気持ちを察する力も求められる。

宿泊予約

電話、ファクス、Eメール、ウェブサイト、旅行代理店などいろいろなチャネル(窓口)から入ってくる宿泊の予約を一括管理する。ノーショー(予約を入れたものの当日現れないドタキャン客)の予測を立て、自社の予約状況だけでなく他ホテルの様子も見ながら、販売時期や販売価格を決定する。イールドマネジメントといって、数が限られた客室という商品から最大限の売り上げを上げられるように予約をとることが求められる。

ハウスキーピング

客室係とも呼ばれ、客室の清掃・管理を担当する。満室の翌日などは、一人で10部屋以上の清掃を担当することも。バスルームを拭き上げ、重いベッドを持ち上げながらベッドメイキングをし、塵一つ残らないよう掃除機をかける。まさに縁の下の力持ち。このほかにもランドリーサービス(ゲストのクリーニングの手配)や備品の貸し出しも行なう。清掃は外部の業者に委託しているホテルも多く、その場合正社員は清掃された部屋の最終確認を行なって、客室という商品のクオリティをコントロールする役割を任される。